- 上司「入りたまえ」
男「失礼します」
上司「この街に……“魔女”が現れた」
男「ほう」
上司「ついては“エネミーオブウィッチ（魔女の天敵）”の異名を持つ君に協力を仰ぎたい」
上司「捕獲し、魔女を裁判にかけるのだ……！」
男「かしこまりました」
男「必ずや……魔女を捕獲してご覧に入れます」ﾆﾀｧｧｧ
- 上司「しかし、魔女は魔力を操り、自在に飛び回ると聞く」
上司「すでに遠くに逃げ去っているという可能性もある」
男「ご安心下さい」
男「実はこのような指令が出るのを見越して、すでに街には結界を張っております」
男「しばらくの間、魔女は街を出ることはできません」
男「いわば、袋のネズミというわけです」
上司「流石だ……吉報を期待しているよ」
男「御意」
- 魔女「はぁ、はぁ、はぁ……」
魔女「この門をくぐれば、街を出られ――」
ﾊﾞﾁﾊﾞﾁｯ
魔女「――ッ！」
魔女「これは……魔女にのみ反応する結界！？」
魔女（そう……どうしても……私を捕まえたいのね……人間たちは……）
- 男「来たか」
部下A「はい」
部下B「魔女が現れたそうですね」
男「ああ、今もまだこの街の中に潜んでいるはず」
男「俺自ら鍛え上げたお前たち二人ならば、常人には不可能な魔女探索・追跡が可能だ」
男「どうか俺を手伝って欲しい」
部下A「もちろんです」
部下B「ご期待に応えてみせます」
- 期待
- 男「ただし……」
部下A「？」
部下B「？」
男「見つけても手は出すな」
男「魔女を捕獲するのは……あくまでこの俺だ」ｺﾞｷｯｺﾞｷｯ
部下A「……！」ｿﾞｸｯ
部下B（やはりこの方は……恐ろしい……）
- ひえぇ…こわい
- ﾊﾞﾁﾊﾞﾁｯ
魔女「ぐっ！？」
魔女「ここもダメか……」
魔女（これほど広範囲に、これほどの結界を張れるなんて……一人しかいない）
魔女（“エネミーオブウィッチ”……！）
魔女（まさか……またあいつと対決することになるなんて……）
- 老人「これこれお嬢ちゃん、どうしたのかね？」
魔女「！」ﾋﾞｸｯ
魔女「私に……近寄らないで！」ｷﾞﾛｯ
老人「ひっ！」
魔女「……ごめんなさい」
魔女（私の身なりは目立つ……）
魔女（今は……少しでも人に目撃されるのを避けなくては！）ﾀﾀﾀｯ
- ……
ﾌﾟﾙﾙﾙﾙ…
上司「もしもし」
上司「はい……“エネミーオブウィッチ”に任せました」
上司「ええ、ええ……はい。必ずや……」
ｶﾞﾁｬｯ
上司「クックック……頼むぞ、魔女の天敵よ」
上司「罪深き魔女を裁判の場に立たせ、正義の審判を味わわせるのだ……！」
- 部下A「このあたりで黒い服を着た女の子を見なかったか？」
主婦「見てないわねえ」
部下A「黒い服の女の子を――」
職人「見てねぇなぁ」
部下A（魔女は黒色の衣服を身に付けねば、真価を発揮できない……）
部下A（すでに結界にも気づいたろうし、迎撃のため、見つかるのを承知で黒い装束を着ているはず……）
- はよ
- 部下B「……」ﾀﾀﾀｯ
部下B「む」
魔女「……」ｺｿｺｿ
部下B（……いた！ 魔力も感じられる！ よし、このまま尾行すれば！）
- 部下B「……」ｿﾛﾘ…
魔女「……！」ﾊﾞｯ
部下B（だが、さすがに勘が鋭い！ 逃がしてなるものかッ！）
- 男「……む」
部下B『こちらC-27地点、魔女を確認しました』ｻﾞｻﾞｯ…
男「よくやった」
部下B『しかし、魔女に気づかれ、現在追跡中です』
男「そうか、すぐ応援をよこす。手はず通り、二人で魔女を追い立てろ」
部下B『了解！』
- 魔女狩りって調べるとほんと胸糞な風習だったんだなって思うよな
- 部下A「待てーっ！」ﾀﾀﾀｯ
部下B「魔女めっ！」ﾀﾀﾀｯ
魔女（なんてしつこい奴らなの……）
魔女（あいつら“エネミーオブウィッチ”ではないとはいえ、かなりの訓練を積んでいる！）
魔女「仕方ない！」
青年「ふんふ～ん」ｻｯｻｯ…
魔女「これ借りるね！」ﾊﾟｯ
青年「えっ！」
- ビューンッ！
魔女（ホウキで空へ逃げる！）
部下A「な……飛びやがった！」
部下B「落ちつけ！ 速度はそれほどでもない！ 地上から追うんだ！」
部下B（それに奴の飛行コースは……あの方の想定通りだ！）
ﾀﾀﾀｯ… ﾀﾀﾀｯ…
- 魔女「……」ｷｮﾛｷｮﾛ
魔女（このあたりなら……人気が少ない。結界が消えるまで……）ｽﾀｯ
男「クックック……」
魔女「！？」ﾋﾞｸｯ
男「待っていたぞ、汚らわしき魔女よ……」ﾆﾀｧｧｧ
魔女「エネミーオブ……ウィッチ……！」
魔女「なんで！？ どうして私を狙うの！？」
男「自分の胸によぉく手を当ててみるんだな……汚らわしき魔女よ」
男「お前の罪は……今こそ浄化されるべきなのだァ！」
- 部下A「待てーっ！」
部下B「やはりこっちに逃げたか！」
魔女「！」
部下A「手こずらせやがって……」ﾊｧ…ﾊｧ…
部下A「手出し無用といわれたが……我らとて対魔女の鍛錬は積んでいる！」ﾀﾞｯ
部下B「覚悟ォ！」ﾀﾞｯ
魔女「そっちがその気なら、仕方ない……」
- 魔女「雷よ！」
ﾊﾞﾘﾊﾞﾘﾊﾞﾘｯ!
部下A「うぐぁっ！」
魔女「風よ！」
ﾋﾞｭｵｵｵｵｯ!
部下B「ぐわぁっ！」
男「バカどもが……手を出すなといったのに出すからこうなる」
男「やはり魔女を捕獲できるのはこの俺のみ！」
- お手本のような噛ませ犬
- 男「ゆくぞォ！」
男「今こそお前の罪をッ！ 浄化してくれるわァァァァァッ！！！」
魔女「あなたには手加減の必要はないわね！」
魔女「光よ！」
ｽﾞｵｵｵｵｯ!
魔女「や、やった！」
男「クックック……」ｼｭｩｩｩｩ…
魔女「！？」
- 男「俺は普段から対魔法ベストを着用している」ﾊﾞｯ
男「体にかなりの負担を強いるから、これを着用して戦闘できるのは、俺くらいのものだろう」
魔女（やっぱりこいつ、只者じゃない！）
魔女（逃げないと！）ﾀﾞｯ
男「おおっと！」ｼｭﾙﾙﾙﾙｯ
ｷﾞｭｯ!
魔女「あうっ！」
魔女（足になにか巻きついて……！）
男「ここまできて、逃がすわけがなかろう？ ……魔女よ」ﾆﾀｧｧｧ
魔女「ひっ！」
- 男「トドメは……これだ」ｼﾞｬｷｯ
男「“アブソーブロッド”」
男「こいつでお前の体に触れれば……」ｽﾞｷﾞｭﾝ
魔女「あっ……ああああっ……！」
男「魔力を吸収することができる。こうなればもはやお前などただの女に過ぎん」ｽﾞｷﾞｭｩﾝ
魔女（ダメ……力が……抜け……）
男「汚らわしき魔女よ……裁判にかけてくれよう」
魔女「いやっ……嫌ぁぁぁぁっ！！！」
- 一人に対して何人で仕掛けてるんだよ卑怯者
- 男「今月だけで分かってるだけで魔法を悪用して食い逃げ7件、ひったくり3件、置き引き2件……」
男「さっきホウキを盗まれたって被害報告もある！」
男「おまけに部下を怪我させてくれたから公務執行妨害もな！」
男「今までは若いからって説教だけで済ませてたが、今度という今度はきっちり裁判にかけて牢屋ん中で反省してもらう！ 覚悟しろ！」
魔女「ひいい、ごめんなさ～い！！！」
おわり
- 普通に悪人で草
男「汚らわしき魔女よ……裁判にかけてくれよう」魔女「いやっ……嫌ぁぁぁぁっ！！！」
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