「熱い！　助けてくれ！」「嫁が、子どもが…」　家が丸焼けになった男性、母と妻と子供を失う　西宮

「嫁が、子どもが…」。２１日早朝、西宮市松山町で起きた民家火災は６９歳、４９歳の女性と、高校生とみられる１７歳少年の計３人が亡くなる惨事となり、助かった４５歳男性はそううめき、救急搬送された。２階建て木造の延べ約１００平方メートルは全焼。４人は家族とみられ、西宮署は男性が落ち着くのを待って事情を聴き、出火原因を調べる。（大田将之、村上貴浩、浮田志保）

　午前５時４５分ごろ、近くに住む会社員男性（２９）が民家の１階や駐車場にあるごみ箱から火が上がっているのを見つけ１１９番した。男性の父親（６２）は「真っ黒な煙が立ちのぼり、ガラスの割れる音やパーンという乾いた破裂音がした」と顔をこわばらせた。

「熱い！　助けてくれ！」。通り掛かった市内の主婦（４８）は煙の中、２階のベランダから身を乗り出して叫ぶ男性を見た。次の瞬間、ベランダのひさしが焼け落ちたが、消防車はまだ到着しない。

　近隣住民が数人集まり、誰かが「はしご！」と叫んだという。すぐに２、３本が集まり、ベランダにかけても、男性は足元がぐらぐらして降りられない。すると誰かがマットレスを運んできた。道路に敷くとはしごは安定し、男性はようやく自力で脱出できた。

　男性は半袖シャツに半ズボン姿でへたり込んだ。女性がそばに付いて「痛いところはありませんか」と聞くと、返答はしどろもどろで、無言でうつむいたり、首を振ったりするだけだった。

　「中に人がいるんですか」と尋ねると、男性は燃えさかる民家の前にうつむいて、嘆くように繰り返した。「嫁が、嫁が」「子どもが、学校が…」

２階で妻と息子が、１階では母が寝ていたらしい。女性は、駆け付けた隊員に男性を任せて現場を離れた。３０分足らずの出来事だったという。男性の背中をさすった手が真っ黒になったことに、自宅に帰って初めて気付いた。

　民家の斜め向かいに住む会社員男性（５２）は、助かった男性が酸素マスクを着けられて救急隊員に運ばれていくのを見た。焼け焦げた民家を眺めて呆然と言った。「２階部分から炎が上がって、避難することしかできなかった。大変なことになってしまった」

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