「ボクの穴、彼の穴。」１７日から、東京芸術劇場プレイハウスで上演

　松尾スズキ（５７）翻訳の絵本をもとに、ノゾエ征爾（せいじ）（４５）が脚本・演出を手がけた２人芝居
「ボクの穴、彼の穴。」が１７日から、東京芸術劇場プレイハウスで上演される。
孤独から妄想にさいなまれ、見えない敵と戦う兵士を演じる宮沢氷魚（ひお）（２６）は、
「彼の状況は今の私たちに通じる。社会と向き合うのは勇気がいるけど大事なこと」と話す。

　戦場で穴に閉じ籠もった２人の兵士は、見えないお互いを恐れ、怖がり、殺そうとする。相手も同じ人間だと知らずに－。

　「人種差別やＳＮＳ誹謗（ひぼう）中傷、新型コロナウイルス…。現代社会は『見えない敵』ばかり」。作品と現実との共通点を語る宮沢もコロナに苦しめられた。

　３～４月の舞台「ピサロ」は途中で中止。舞台「アンナ・カレーニナ」も５月に中止が発表された。
「中止が最善だったというのは分かっている。でも、費やしたエネルギーの行き場がなくて、悔しくて、本当にやり切れなかった」と振り返る。

　緊急事態宣言の解除で「幕が開いたのが唯一の救い」だったという。だからこそ、「全てをかけてこの作品に挑む」と決めた。

　作品の結末は見せ方次第でバッドエンドにもグッドエンドにも受け取れる。
「作中の彼らに希望はあると信じている」と話し、「ノゾエさんには毎日（演じ方を）変えていい、といわれた。
公演は１回たりとも同じ内容にはならないはず」と語る。

　舞台が日常から遠くなったことをずっと憂えていた。
最後に「お客さんは命をかけて観劇しに来てくれる。それに値するものを必ず、必ずこの舞台で見せますから」と決意を語った。

https://www.sankei.com/smp/entertainments/news/200907/ent2009070006-s1.html