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競技中の「盗撮」、神経とがらす主催者　写真拡散、法的対応に難しさ

競技中の写真や動画撮影をやめさせようとして、大会主催者側が違法ではない無実の撮影者を締め出す例が出ている。性的興味の対象として、映像の一部がＳＮＳで拡散されるのを防ぐためだが、対応は難しい。

　１２月上旬、大阪府堺市の体育館であったレスリング男子の大学生の試合で、大会役員が、館内で撮影していた３０代くらいの男性を呼び止め１１０番通報した。大会は無観客での開催だった。北堺署の調べに男性は「格闘系が好きで、大会があるのを知って来た」と説明した。盗撮にあたる写真はみつからなかったが、日本レスリング協会はホームページで「盗撮男」と伝えた。

　盗撮は隠された体や下着を撮影すること。通常の競技撮影が条例違反の盗撮になることはない。通報した大阪府内の教員の西日本学連役員は「性的な目的で撮影されたと思った。何度も通報したことがあるが事件になったことはなく、条例違反の盗撮に当たらないことは知っているが、警察を呼べばやめさせられると思っている」と説明した。

　撮影を問題視する背景にあるのが、インターネット上での映像の拡散だ。競技の写真や動画が、男女の裸と並べて投稿されることもある。撮影された側の被害感情は強い。連盟役員はこれまで、選手の肖像権を守るためと説明して来場の目的を聞き、控室にとどまらせた上で警察への通報を告げている。写真を消去するから通報しないで欲しいと言われることもあるという。

　日本オリンピック委員会は１１月、盗撮を「卑劣な行為」と非難する声明を出した。陸上、水泳などでも撮影を制限する対策を取っているが、法的根拠がないと大会主催者側が問題視されることがある。

　日本陸上競技連盟は全国の競技運営責任者を集めた会議で、競技撮影は条例違反の盗撮にあたらないこと、対応が暴力や暴言に発展したり、「盗撮」と決めつけたりすると、逆に１１０番通報されたり、慰謝料を請求されたりすることを説明している。

　学生や大会主催者の相談に応えてきた早大准教授（スポーツ法）の松本泰介弁護士によると、肖像権は法律で保護される権利ではなく、一般のスポーツ選手に当てはめるのは難しいという。撮影者が建造物侵入罪になった例があるが、１１０番通報しても刑事事件にならないと判断して警察が来ない場合もある。写真やビデオは表現行為でもあるため、松本弁護士は公序良俗に反しない撮影まで規制することを懸念する。映像の拡散を防ぐのも簡単ではない。

　現実的な対策として松本弁護士はこう助言している。「入場者の制限は主催者の裁量で決められる。撮影の規則を決めて公開しておけば、警察に頼らなくても、主催者は違反者に退場を求められる」