（ヽ^ん^）「おい、死ぬ気で頑張れよ」「休日で遊んでんのか。明日の商談の準備しとけ」→部下に告発されパワハラ認定されてしまう

「死ぬ気でがんばれよ」部下への熱血指導がパワハラ認定された営業部長の「悪夢」
https://news.yahoo.co.jp/articles/a3e44a6f108fb2032dd7201c4335adbab8b8d18e

横川さんは部下に対するその行為が「パワハラ」であることを自覚していない、“無自覚パワハラ”のケースだった。

東京に本社のある大手メーカーに勤める横川さんは数年間、人事部に在籍した以外は、
入社以来営業畑ひと筋で歩み、一年前に念願の部長に昇進した。

同時期に入社5年目で総務部門から異動してきた27歳の男性社員に目をかけ、
本来は先輩社員や管理職でも課長レベルが指導にあたる、営業のノウハウや神髄を直接説いて聞かせたり、
自身が現場に出ていた時から贔屓にしてもらってきた取引先を飲み会の席を設けて紹介したりするなど、
世話を焼いた。

そのお陰で部下は「メキメキと腕を上げていった」のだと、横川さんは信じて疑わない。

異動から半年過ぎた頃、突如として異変が訪れる。その部下が「うつ病」の診断書を提出し、
1ヵ月休職することになったのだ。横川さんにとっては寝耳に水だった。

■知らぬ間に進んでいたパワハラ調査

部下がうつ病休職に入るのと時を同じくして、横川さんへのヒヤリングが行われた。
実際にはその約2週間前に、休職した男性社員からのパワハラ告発を受け、
人事部のパワハラ相談窓口の担当者、人事部長が直属の課長、部次長ら告発者の上司や
同僚数人から事情を聴き、目撃情報や状況の聞き取り調査をほぼ終えていた段階だった。

「入社年次が一期下で、一時期人事部で一緒に仕事をしていた人事部の部長から
『ちょっと時間ありますか？　』と急に会議室に呼ばれた時は、
こんなことになるなんて、全く予想だにしていませんでした。
まるで、悪夢、です。それで……アイツから『パワハラの訴え』が出ていると……。
それだけ、じゃ、ないんです……調査の結果、パワハラ、が、認め、られたと……」

あの会議室での本人曰く「悪夢」がよみがえったのか、
横川さんはコツンと音がするほど額を喫茶室のテーブルにぶつけて顔を伏せ、両手で後頭部を覆った。
再び沈黙が訪れる。時計を見るのも忘れていたほどだったので、それほど長くない、
たぶん1分程度だっただろう。顔を上げた彼は一変して無表情で、こう続けた。

「あくまでも部下の成長を願っての指導で、入社5年目で初めての営業職ということで
戸惑いもあるだろうと思って懇切丁寧に教えた、と主張しましたが、
全く聞き入れてもらえませんでした。
おまけに……ボイスレコーダーまで出しやがって……」

淡々と丁寧に話していたかと思うと、突然怒りを露にして乱暴な言葉になる。
彼自身、現状を受け入れられず、精神状態が不安定になっているのがうかがえた。

「もし差しえなければ、ボイスレコーダーに何が録音されていたのか、教えていただけますか？」

横川さんの様子が少し落ち着いたのを見計らって、恐る恐る尋ねてみる。

すると、冷静さを装いながら教えてくれた。まるでセリフを棒読みするように。

「お前、大人し過ぎるぞ。やっと営業に来れたんだから、死ぬ気で頑張れよ」

「昨日の夜の態度は何だ。せっかく取引先を紹介してやったんだから、もっと食いついていけよ」

中には、休日に携帯に残した留守電メッセージも証拠として提出されていた。

「……休日で遊び呆けているのか。明日の商談に備えて、ちゃんと準備しておけよ」──。

人事部長の説明では、その部下の男性社員は営業部に異動してきてほどなくしてから、
横川さんの言動がパワハラであると認識し始め、次第に不眠になり、
ふさぎ込み、仕事に集中できなくなることが増えていった。

直属の課長に相談したところ、人事部にパワハラ事案として訴えるとともに、
産業医の面談を受けるように言われ、産業医の紹介でメンタルクリニックを受診して
軽度のうつ病と診断されたのだという。

ここまでの記述だけ読むと、横川さんは単に古い価値観に囚われた
“無自覚パワハラ”の加害者に思えるかもしれない。
しかし、彼を10年以上取材してきた筆者は、そう単純化できないことを知っていた。
じつは横川さん自身がかつてパワハラ被害を受けていたのだ……。
意外なその経緯について
〈【後編】被害者から加害者へ…部下へのパワハラで降格した営業部長の「古い価値観」〉
で詳述する。