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金子みすゞ詩作の地をたどる　STU瀧野「山口の誇り」

瀬戸内7県を拠点に活動するアイドルグループ「STU48」と各地の魅力を紹介していく「瀬戸リスト」。瀧野由美子さん（22）と矢野帆夏（ほのか）さん（20）は、童謡詩人・金子みすゞ（1903～1930）が詩作した山口県下関市を訪れ、生涯をたどった。

甲冑ずしり25キロ　STU矢野、下関で歴史の重み体感
これまでの瀬戸リスト
　知的な表情を浮かべた和服の女性の写真が、行き交う人や車に視線を投げかける。山口県下関市唐戸地区にある金子みすゞ顕彰碑。生まれ育った同県長門市から、母の再婚先である下関へ出てきた20歳ごろに撮影されたみすゞをあしらっている。

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　「『みんなちがって、みんないい』っていう詩の一節、知ってる？」。地元のみすゞ研究家、木原豊美さん（75）が碑の前で問いかけた。2人がうなずく。「タイトルは？」との質問に、「『私と小鳥と鈴と』です」と瀧野さん。「山口県出身だから、みすゞの詩は学校で習いました」

　みすゞはペンネームで、本名はテル。唐戸地区の一角にあった書店で働きながら詩作を始めた。雑誌に投稿すると、選者の西条八十が絶賛。将来を嘱望されていたが、夫と離婚してほどなく、毒を飲んで26歳で自死した。一人娘と、500編以上の詩が残された。

　顕彰碑には、詩の一つ「はちと神さま」が書かれている。

　「はちはお花のなかに」「お花はお庭のなかに」……。2人は朗読を始めた。「世界は神さまのなかに」「そうして、そうして、神さまは」「小ちゃなはちのなかに」。最後まで読み上げると、2人は感じ入った表情に。「みんな同じ世界にいるんですね」。瀧野さんがため息をついた。

　続いて顕彰碑から500メートルほど東にある亀山八幡宮へ。境内から関門海峡を一望でき、「関の氏神」として親しまれる。「うわあ、かわいい！」。境内の池で甲羅干しをする亀たちを見て、矢野さんがはしゃいだ。

　みすゞは夏の大祭の情景をつづった「夏越（なごし）まつり」など4編の詩を書いている。竹中恒彦宮司（77）は「境内に二つの詩碑があります」と教えてくれた。そして、境内に至る石段のふもとを指さした。「このすぐ下に、みすゞが最後の写真を撮った三好写真館がありました」

　みすゞは死の前日の1930（昭和5）年3月9日、1人で三好写真館を訪れ、撮影してもらっていた。その写真と、撮影に用いられたとされるカメラは、近くにある大正時代の建物「旧秋田商会ビル」（新型コロナウイルス感染拡大防止のため休館中）内に
展示されている。矢野さんは写真を見つめて「すごく貴重ですね」。木原さんは「20歳の頃と全然違うでしょ。表情がキリッとしていて」と応じた。
　「どうして最後に写真を撮ったんだろう」。瀧野さんの疑問に、木原さんは答えた。「みすゞは詩人として撮ったんだと思う。我が子に残すためなら、抱いて撮ると思うから」

　木原さんは改めて「私と小鳥と鈴と」を挙げた。「『私』はみすゞ、『小鳥』は夫、『鈴』は娘だと思う。大切な一人娘がいるのは小鳥というあなたがいるから。そんな思いで『みんなちがって、みんないい』と言い聞かせているんだと思うの」

　2人は何度もうなずいた。

　2020年はみすゞの没後90年。瀧野さんは「同じ山口県民として偉大な詩人がいたことは誇り」。矢野さんは「詩が生まれた場所を訪れて、人生を知ることができてよかった」と話した

　新型コロナウイルスの感染防止のため、県域をまたぐ移動に自粛要請が出ています。動画・写真と記事で各地の風景を楽しんでいただこうと、取材可能な場所を選んで紹介しています。終息したら訪ねてみて下さい。

　たきの・ゆみこ（22）　山口県出身。鉄道ファンで500系新幹線が一押し。人前で涙は見せないが、1人だとテレビ番組に感動してつい号泣して

　やの・ほのか（20）　広島県出身。昨秋、5歳まで住んでいた同県江田島市の初代広報大使に任命された。地元の自然や食べ物、人々の温かさをPR中。

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　「STU48の“瀬戸リスト”」は、瀬戸内地域の魅力を掘り起こして読者にお届けする企画です。2018年7月の西日本豪雨災害からの復旧・復興を応援しようという思いもあります。STU48の皆さんやこの地域の観光振興に取り組む「せとうちDMO」の協力を得て取材してきました。STUメンバーの旅は今回で終わります。