【育休】「産後2カ月で復職を」仙台市が保育所利用で説明誤る　育休中断の母に保育料返還へ

第２子の出産から２カ月余りで復職しなければ、第１子の保育が受けられない――。仙台市の誤った説明に基づき生後２カ月の長女を保育所に預けた市内の３０代女性が、本来必要が無かった保育料の返還を求めている。女性は１歳で預ける予定だったが、前倒しを余儀なくされた。市は謝罪し、返還に応じる方針。【深津誠】

　女性は、フルタイムで勤務する会社員で、４歳の長男は市内の幼稚園の預かり保育を利用し、育児と仕事を両立していた。昨年５月、長女を妊娠したことが分かり、１月に出産後は育児休暇を１年間取得するつもりでいた。ところが昨年末、「育休開始から２カ月以内に復職しなければ、長男の預かり保育が継続できない」と幼稚園から聞かされた。休暇中なら自宅で長男を育児できるため「保育の必要性がない」という見解で、市の担当者がそう説明したという。女性が市に確認すると、同じ回答だった。「首も据わっていない長女を、保育所に預けたくない。産後の体調不良も完治していないのに……」

　女性に残されたのは、三つの選択肢。長女を生後２カ月で保育所に預けて復職▽長男の預かり保育を断念し、２人の子の「保活」▽退職――。幼稚園の保護者の中には、退職する人もいるというが、長く勤めている今の仕事を続けたかった。苦渋の判断で、４月に復職すると決めた。

　無事出産し、２月初旬に退院したその日に区役所を訪れ、保育所を探した。締め切り間際のため急いで申し込み、何とか入所できる保育所が見つかった。

　復職は４月の予定だったが、新型コロナウイルスの影響で通園自粛を求められたため、７月に。そして復職して間もない７月中旬、幼稚園から説明が間違っていたと告げられた。「下の子が１歳になるまで、預かり保育を継続できる」。市に確認すると、おわびの文書が郵送で届いた。

　市によると、国の幼保無償化を受け、市が「幼児教育無償化事務センター」を作り、業務を一部民間に委託。その際、市認定給付課が作成した質疑マニュアルにミスがあった。「マニュアルが不十分で、センターが別の制度と混同した」（同課）という。女性と同様に、誤った説明を受けた可能性がある保護者は他に１１人いた。

　女性は、９月から育休を取り直せることになり、本来は必要なかった４～８月分の保育料の返還を求めた。市は当初難色を示していたが、応じる方針に変わったという。返還を求めたのは「金額の大小ではなく、間違いを謙虚に認めてほしかったから」。市の対応について「母乳をずっとあげたかったし、２カ月で預ける罪悪感もあった。ミスはあると思うが、文書で済ませるのではなく真摯（しんし）な説明をしてもらいたい」と話す。

　市は近く、女性に面会して経緯を説明し、謝罪するとしている。

毎日新聞 2020年9月5日 08時54分(最終更新 9月5日 08時55分)
https://mainichi.jp/articles/20200905/k00/00m/040/018000c